いきいき南国 第6回

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掲載日:2018/06/28

いきいき南国では、地域の元気と活性化のために活動している市民の皆さんの活動をご紹介しています。

大工になるきっかけはお父さん

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第6回目は、大そねで戸建住宅をメインとした建設業を営まれている溝渕加寿彦さんです。

溝渕さんがこの仕事に就く決心をしたのは高校生の時のこと。夜更かしをして帰ってくることが多かった高校時代のある日、夜遅くに家に帰ると刻屋(作業場)に灯りが点いており、お父さんが一人で黙々と仕事をしている姿を目の当たりにします。子どもの頃のお父さんのイメージは荒くれ、豪快な感じがあったそうですが、黙々と仕事に打ち込む実直な姿は心を打つものがあり、大工の道へ入るきっかけとなったと話してくれました。「大工をしたい」とお父さんに伝えると、「やれ。大工はいいぞ。」と言ってくれ、高校を卒業するとすぐに弟子入りをしたそうです。「大工が、これほど厳しい世界とは、思わなかった」。と、その後一人前の職人となるまでに、たくさんの技術を得る努力や経験を重ねたことを話してくれました。

 

「人と同じように木にも個性があるため、木の良さやそれぞれの木に合った技を活かした木造建築の良さを一般の人にもわかってもらえるような仕事をしていきたい」と熱意を語ってくださる溝渕さん。現在は、お父さんが50年位前に始めた会社を引継ぎ、新築、増改築、リフォーム、耐震工事、設計等を行っています。

ハウスメーカーの家が多くなってきている中、木造建築で木の良さを活かす見せ方や木の強さを最大限に活かす設計にこだわり、高知の風土に合った家造りをされています。建築年数が古くなっても、家族の絆や思い、愛着のわく家づくりを目指されています。

 

技術の伝承 作ることの楽しさ伝えたい

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お仕事の傍ら、高知工業高校へ技術を教えに行かれている溝渕さん。高校3年生になると、専攻した課題を一年間通じて仕上げていく中で、大工さんにも教えてもらいながら完成させるそうです。生で見る大工さんの技術に「ほー」と感心して真剣に見入る生徒も多いそう。子供たちに少しのコツを教えると、素直に習得していってくれているようです。これを機会に、大工の道へ進むきっかけとなればと考えられています。


また、溝渕さんが所属する建設労働組合の青年部活動の一環で、高知県内の小学校やイベントで槌やのこぎりなどの道具を使っての木工教室を出前授業として開かれています。以前、出前授業でカスタネットや鈴を作ったときには、作った楽器と若い大工さんのギターで演奏会を行ったこともあるようです。木工に親しんでもらいながらの演奏会は、大いに楽しんでもらえたと笑顔で話してくださいました。

今後については、高知のDIY人口を増やす活動を行っていきたいと考えられています。テレビでは取り上げられることが多いですが、高知では、まだまだ根付いていないので大人向けの木工教室を定期的にやっていきたいと話されていました。モノ作りを通して「自分で作ることの楽しさ」を知ってもらえると、モノに対しての愛着がわき、些細な傷や痛みがあっても大切に使われる方が多いとのことです。


後継者を育てていきたい

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高知県では、今後起こると予想される南海トラフ地震などの災害時には、多くの家屋の倒壊の危険性が指摘されていますが、倒壊に至らなかった家屋についても一定の損傷が発生します。そのため、倒壊しなかった家がそのまま使用できるのか、または一定の修復が必要なのかどうかを判断する必要があり、家屋の構造を熟知していている職人が求められています。
こうした現状も踏まえ、溝渕さんは今後、後継者の育成に力を入れていきたいと考えられています。現在、建設業界では60代の職人がほとんどを占めているようで、若い20代の職人が少ない状況です。溝渕さんの会社でも30代の職人が修業中ですが、技術を教える際には、できるだけ多くの基本技術を取り入れるよう心掛けられています。木造建築の基本を深く知ることで、高知の気候に合った家が作れるようになり、増改築やリノベーションなどの依頼にも対応できるような職人を育てると同時に、人をまとめることができる棟梁も育てていくことにも取り組まれていらっしゃいます。



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